早川書房の謎2

早川書房の謎
早川書房の謎

2022年春頃からだと思うが、

早川書房から、

「ピーターラビットの絵本」が刊行されることになった。

手元にあるピーターラビットの絵本は、

福音館書店のもので、

今、福音館書店のHPを見ると、それも販売されている。

(もしかしたら、在庫限りなのかもしれない)

そんな、

ピーターラビットの絵本の出版

120周年を記念して、

2022年は、

「ピーターラビット展」が、

日本各地を巡回していた。

ただ、個人的には、

「なぜ、早川書房から、

ピーターラビットの絵本が刊行されるのか?」

不思議に思っていた。

早川書房が、外国著作物に強いという側面を持つ、

という点については、十分に理解している。

(一応、書店のマスターだし)

けれど、そうした著作物の中でも、

比較的、ミステリやSFを刊行している、

というイメージが強い。

そんな早川書房が、

何故、かわいらしさの世界代表のような、

ピーターラビットの絵本を刊行するに至ったのだろう?

そんな疑問を抱えたまま、

件のピーターラビット展を、

観に行ってみることにした。

展示そのものは、

ピーターラビットのかわいらしい世界観に溢れていて、

観ていて微笑ましい気持ちになってくるし、

著者のベアトリクス・ポター直筆の絵を見れば、

ピーターラビットが、

長らく、世界中で、多くの人々に愛されている理由も

十分に伝わってくる。

とはいえ、

「何故、早川書房から?」という疑念は、

依然、解けないまま、

展示の中を、歩を進めていく。

そして、

ある何気ない展示物を目にした途端、

抱えていた疑問が、

一気に氷解した。

それを作った方だって、

よもやこんなことを意図しては

いらっしゃらないだろうから、

その展示物に対峙して、

そのような意味を読みとったのは、

おそらく、私だけだろう。

その展示物とは、

『ピーターラビット一家の家系図』である。

ピーターラビット一家は、

お父さんうさぎとお母さんのうさぎ、

4匹のウサギの兄妹

(ピーター、フロプシー、モプシー、カトンテール)からなる。

問題は、

そのうちのお父さんうさぎだ。

家系図におけるその姿は、

「うさぎ」ではなく、

なんと「一枚のパイの絵」で

描かれていたのだ!

そう、

お父さんうさぎは、

物語冒頭から、

農場主のマクレガーさんに囚われ、

パイにされてしまっていたのだ。

かわいい絵柄にすっかり騙されていた、

というと、いささか語弊があるけれど、

ピーターラビットの最初のエピソードは、

いきなり殺人(正しくは殺兎)から始まる、

いわばミステリだったのだ!

このミステリの本質をして、

早川書房からの刊行と相なったのだと

一人、合点がいった。

恐るべし、早川書房。

骨の髄までミステリ好きなんだと、

敬意すら覚える。

ちょっとわけのわからない感想を抱きつつ、

「ピーターラビット展」を後にした。

もちろん、

ピーターラビットは、とってもかわいいし、

普通に大好きなのだけれど。